ホテルM&Aを成功させるには。動向や相場を把握して戦略策定を

ホテルM&Aを成功させるには。動向や相場を把握して戦略策定を

今後の需要回復に期待が集まるホテル業界でM&Aを成功させるには、ターゲットの策定や事業再生の方向性がポイントです。特にどのような点に注意すればよいのでしょうか?戦略や営業許可はもちろん、把握すべき経営資源についても確認します。

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ホテル業界の課題、動向

M&Aを成功させるには、業界についてよく知っておかなければいけません。ホテル業界は今どのような状態に置かれているのでしょうか?まずはビジネスモデルと今後の需要の動向を確認しましょう。

ビジネスモデルの転換

ホテル業界は、固定費が大きい傾向のある業態です。必要な施設を整えるためには巨額の設備投資が必要で、十分なサービスを提供するためにたくさんの従業員を雇用しなければならず人件費もかかります。

社会情勢や景気の動向に影響を受けやすい点も、ホテル業界の特徴です。コロナ禍でも、経営難に陥った宿泊施設が数多くあります。

このような中、ハウスキーピング会社との契約見直しによる経費削減や、テレワーク需要を見込んだプランの提供を始めたホテルもありました。しかし現状ではまだ、コロナ禍以前と同様の水準まで業績は回復していません。

ホテル利用者のニーズの変化もあり、ビジネスモデルの根本的な見直しが必要な業界といえます。

観光需要回復に期待が高まる

コロナ禍以前の2019年時点で、国内宿泊旅行は17兆円を超える市場規模でした。東京五輪の開催を控え、インバウンドの人気も急速に高まっていた時期です。

2020年以降、感染症の流行によって外国人観光客の数は落ち込んでいますが、2022年5月にはわずかに回復しています。国もホテルや観光地を支援し、段階的なインバウンドの復活を支援する方針です。そのため観光需要の回復が期待されています。

再び需要が高まることを見越し、収益性の向上を目指したM&Aによる業界再編の動きが予想されます

ホテルのM&Aに必須の戦略

M&Aを成功させホテルの経営を軌道に乗せるには、まずターゲットをどこに定めるか検討します。加えて、事業再生や収益向上に向けた方向性も定めなければいけません。入念に計画した戦略が必要です。

ホテルのタイプなどターゲット選定

ホテルには、以下の通りターゲットの異なる複数の業態があります。

業態 特徴 ターゲット
シティーホテル 都心部の大型ホテル、結婚式や株主総会などの開催にも対応 旅行客・ビジネス客などあらゆる客層
ビジネスホテル 都心部に立地している ビジネス客
リゾートホテル 温泉やビーチなどがある レジャー客

経営戦略に従いターゲットを絞るには、まず業績・規模・評判など、ホテルについてよく知る必要があります。その上でサービスごとの売上や事業活動について把握し、顧客分析も実施しましょう。

最終的に対象のホテルにどのような強みがあり、顧客へどのようなサービスを提供できるかを明らかにします。

利用者数のみならばシティーホテルやビジネスホテルが若干多いという調査結果がありますが、戦略によっては、利用人数が少なめのリゾートホテルが向いているケースもあります。

どのように事業再生し、収益向上を図るか

買収したホテルの事業再生プラン策定も欠かせません。ポイントは相乗効果です。既存の宿泊施設や事業との相乗効果が得られる形態での運営ができるか、検証を重ね戦略を立てましょう。

例えばホテル事業を手掛けている企業が規模を拡大するためにホテルを買収した場合、運営システムや人材採用・教育・広告宣伝などをグループとして共通化できれば、効率化による相乗効果を期待できます。

また立地を生かす戦略を立てるのも重要です。海が近いなら海鮮メニューが充実した食事付きの宿泊プランを作る、温泉地なら浴場の設備を充実させるなどの工夫により、利益率を高められるかもしれません。

主な買い手となるのは?

ホテルM&Aの買い手になるのは、相乗効果を期待できる事業者が多い傾向です。規模の拡大を目指す同業者や、ホテルの運営に生かせる飲食や観光など関連する事業者が挙げられます。

宿泊施設の運営会社など同業者

同業者による買収では、規模の拡大による競争力アップが目的です。買い手が大手であれば、宿泊価格を下げつつ安定した運営も実現できるでしょう。

また規模が大きくなれば仕入れの量が増えるため、値引き交渉がしやすくなります。コスト削減につながる相乗効果を得られるでしょう。

同業者による買収の例として、『大江戸温泉物語』が挙げられます。2001年創業の同社は2007年以降、経営難や後継者不在の旅館・ホテル・テーマパークなどを買収し、一時は約40施設を手掛けるまでに拡大しました。

また星野リゾートも、同業者による買収の成功例です。経営破綻した宿泊施設を買収し、事業再生によって価値を高める手法で、顧客満足度の高いホテルを運営しています。

飲食や観光など関連業者

関連業者による買収によっても、相乗効果を得られるでしょう。例えば飲食業・不動産業・観光業などを展開している企業であれば、自社が持つノウハウをホテル事業と組み合わせた戦略を立てられます。

また集客に強い企業も、ホテルの運営で相乗効果を得やすい組み合わせです。例えばWebマーケティングを行っている企業であれば、自社でホテルの利用者を効率的に集客でき、旅行代理店への手数料の削減にも役立ちます。

相乗効果(シナジー効果)について詳しく解説している以下も、ぜひご覧ください。

シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説
用語説明
シナジー効果とは?意味や事例、譲渡対価への影響について解説

多くの企業は『シナジー効果の創出』をM&Aの目的の一つとして掲げます。日本語では相乗効果を意味しますが、具体的にはどのような事例を指すのでしょうか?対義語である『アナジー効果』の意味や、シナジー効果に関連するフレームワークも紹介します。

ホテルのM&Aに必要な資金

ホテルを買収するには資金が必要です。必要な資金はホテルの規模によって異なりますが、丸ごと買収するなら数億円を超えるケースもあります。コストを抑えてホテル事業を始めるには、区分営業権を所有する方法も検討するとよいでしょう。

取引金額の相場は規模によって異なる

大規模で古いホテルや、小規模で新しいホテル、宿泊のみを目的としたシンプルなホテル、施設内にレジャーが豊富に用意されている充実度の高いホテルなど、建物の大きさや設備の充実度はホテルによってさまざまです。

そのため買収価格にも差があります。中小規模のホテルであれば、数千万~数億円で買収できるでしょう。一方、大規模なホテルや施設の充実しているレジャーホテルであれば、数十億円というケースもあります。

区分営業権を所有する方法も

1部屋数十万円で、ホテルの区分営業権を個人が所有するケースも増えています。運営自体は委託し、賃料を支払いつつ、利用者が宿泊すればその分の利益を受け取れる仕組みです。

集客・ハウスキーピング・管理など維持に必要な業務は全て任せられます。必要なのは作成された管理報告書を確認することくらいです。

また料金を先払いで決済する仕組みが構築されていれば、賃貸物件のように滞納によるリスクがありません。

ホテルのM&Aスキーム

会社や事業の権利を譲渡するM&Aでは、スキームの選択がポイントです。ホテルを運営するには営業許可が必要なため、その点も踏まえてスキームを選ばなければいけません。

営業認可の引き継ぎがポイント

ホテルを営業するには『旅館業営業許可』が必要です。そのため既存事業がホテル以外なら、営業許可を引き継げる方法で手続きを実施すると、スムーズに営業を始められます。

またホテルは宿泊だけでなく、食事やアルコールを提供しているケースも多いでしょう。多くのホテルに当たり前のサービスを提供するためには、『飲食店営業許可の取得』や『消防計画の届出』『酒類提供飲食店営業の届出』も欠かせません。

株式譲渡

営業許可を含めた引き継ぎが必要なら『株式譲渡』が適しています。買い手が株式を買収することで、売り手企業の経営権を取得し、営業許可も含めてホテルを引き継ぐ方法です。

株式譲渡を行うと、営業許可の申請事項のうち代表者が変わります。そこでM&A実施後は旅館業許可申請書記載事項変更届に履歴事項全部証明書を添え、変更の手続きを実施しなければいけません。

また丸ごと全てを引き継ぐため、手続きが比較的シンプルなのも株式譲渡の特徴です。特に中小規模のホテルでは、経営者が株式を全て保有しているケースも多いため、手続きがスムーズに進みやすいでしょう。

事業譲渡、会社分割

選んだ事業のみを引き継ぐ『事業譲渡』の場合、営業許可は引き継げません。売り手企業がホテル事業を売却するケースでは、営業許可は引き継ぎの対象外です。そのため事業譲渡でM&Aを行うなら、別途営業許可を申請し取得しなければいけません。

一方『会社分割』であれば、承継承認申請によって営業許可の名義変更ができます。新たに作った会社へ事業を引き継がせる『新設分割』でも同様です。

M&Aのスキームについて解説している以下もご覧ください。

M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い
手法
M&Aにはどんな種類がある?株式譲渡、事業譲渡、合併の違い

昨今は多くの企業においてM&Aが成長戦略として位置付けられています。M&Aと一口にいっても複数のスキーム(手法)があるため、目的によって最適なものを選択する必要があります。株式譲渡や事業譲渡など、M&Aの種類とその特徴について解説します。

経営資源の実情を把握する

M&Aを実施する際には、ホテルに備わっている経営資源を確認しましょう。設備の状態やスタッフの雰囲気、売上債権の金額などを明らかにした上で、買収するかどうかを決定します。

設備

必要な設備更新が行われていない場合、重要な問題が潜んでおり、M&A後に修復費用が必要になるかもしれません。そこで設備の状態を必ず確認しましょう。

買収後に大規模な修繕が必要な状態だと判明した場合、その後の交渉を有利に進められるよう準備が必要です。例えば修繕費用の見積もりを出しておけば、その分の値引き交渉をスムーズにできるでしょう。

スタッフ

現経営者に魅力を感じているスタッフが多いホテルでは、M&Aによって経営者が変わると、スタッフの離職が発生する可能性があります。スタッフに安心感を与えるには、現経営者に一定期間残ってもらい、引き継ぎのサポートを受けるとよいでしょう。

また長く続いている老舗のホテルや旅館ほど、変化を好まない傾向があります。経営者の交代による業務内容の変化に、抵抗を示すスタッフもいるでしょう。スタッフの負担が増え過ぎないよう、段階を踏んで変えていくといった配慮が必要です。

売上債権

顧客から代金を受け取る権利のことを『売上債権』といいます。ホテルの売上債権として代表的なのは宿泊料金です。宿泊料金がきちんと回収できているのかについても、確認しましょう。

未回収の宿泊料金があり、売掛金として計上されている金額が大きい場合、内訳をよく確認する必要があります。宿泊料金の時効は1年のため、それ以前の売掛金は回収見込みがありません。

売上債権の状態を確認するには、デュー・デリジェンスを実施します。専門家へ依頼し、不明点があれば明らかにしておきましょう。

まとめ

観光需要の回復が期待されていることから、ホテルのM&Aが注目されています。既にホテルを運営している同業者はもちろん、関連する飲食業や観光業などの事業者が買収するケースもあります。

M&Aを成功へ導くには、事業を再生し利益アップを目指す戦略を立てた上で実行に移しましょう。スムーズな運営開始のためには、スキームの選択もポイントです。

また設備・スタッフ・売上債権の実情を把握することで、有利な条件で買収できるよう交渉に役立てられます。

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