廃業とは?メリットやデメリット、会社をたたむまでの流れを解説

廃業とは?メリットやデメリット、会社をたたむまでの流れを解説

事業を廃業するといっても、理由はさまざまです。一般的に廃業とは事業をやめることを指しますが、倒産や破産などの意味で使う人も多いため言葉の使い分けに注意しましょう。廃業の定義やメリット・デメリット、廃業前に検討すべきことを解説します。

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廃業とは?

廃業とは一言でいえば事業をやめることですが、倒産や破産、あるいは休業の意味で使う事業主もいるため、まずは定義を明確にしておきましょう。

事業主が自らの意思で事業をやめること

『廃業』とは、事業主が自らの意思において経営をやめることを指すのが一般的です。ただし、法的には言葉の定義が決まっておらず、企業の倒産や破産の場合でも、廃業と表現する人は少なくありません。

さらに、法人でも個人事業でも使われる言葉であり、状況や文脈によって意味する内容が変わるので注意しましょう。

倒産や破産、休業との違い

『倒産』は、業績が振るわず債務の返済ができなくなり、事業を続けられなくなることを指します。これも法的な定義はありませんが、事業者の意思に反して事業をやめざるを得ない状況を指すのが一般的です。

一方、廃業は事業者が自らの意思により事業をたたむことで、たとえ十分な利益が出ているビジネスでも、廃業するケースは珍しくありません。

また、『破産』も事業の資金繰りが苦しくなり、事実上営業を継続できない状態の言葉として使われています。ただし、本来は破産法に基づく法的整理の手段を指す用語で、事業の資産や負債を清算するための法制度です。

両者は同じ意味・文脈で使用されることも多い言葉ですが、倒産は法制度である破産を含め、より広い概念として使われています。

さらに、廃業と混同されがちな『休業』という表現は、一時的に事業を休止することです。事業自体は存続しているので、事業を完全にやめてしまう廃業とは明確に意味が違う点に注意しましょう。

国内企業の廃業状況

国内企業の廃業の状況を確認しましょう。2000年以降、企業の倒産件数は減少傾向にありますが、人手不足や経営者の高齢化、さらにここ数年の新型コロナウイルスの影響で、廃業を選択する事業が増えている状況です。

廃業の実態と件数の推移

帝国データバンクの調査によれば、2021年に全国で廃業や休業、解散手続きをした事業は5万4,709件とされます。前年から2.5%減になっている一方、自主的に休廃業に至った事業の割合が増えている状況です。

コロナ禍をきっかけに、事業の運営自体には問題がないものの、いわゆる『あきらめ休廃業』の割合が高まっています

これは、事業の財務状態やキャッシュの状況にかかわらず、事業主が自主的に廃業や休業を選択するものです。背景としては、コロナ禍で将来の見通しが立たなくなった、経営者の高齢化によって事業の継続が難しくなったという点が挙げられます。

※出典: 全国企業『休廃業・解散』動向調査【2021年】|帝国データバンク

後継者不在による廃業が目立つ

企業が休廃業を選択する原因はさまざまですが、近年は特に後継者の不在による廃業が目立っています。

帝国データバンクによる分析調査によれば、中小企業の後継者不在率は61.5%に至っています。ここ数年はわずかに減少傾向にありますが、全国的に少子高齢化が急激に進んでいるため、再び増加に転ずる可能性は高いでしょう。

実際、2021年に休廃業を選択した企業の代表者の年齢は、平均で70.3歳となっています。80歳以上の事業主も4.7%で、全体として高齢化が進んでいる点がうかがえます。今後さらに事業主の高齢化や、後継者の不在による廃業が増加するでしょう。

※出典: 全国企業「後継者不在率」動向調査【2021 年】|帝国データバンク

※出典: 全国『社長年齢』分析調査【2021年】|帝国データバンク

事業を廃業するメリット・デメリット

事業を廃業するメリットやデメリットについて解説します。メリットとデメリットを比較した上で、事業主はもちろん、従業員や取引先などにできるだけ迷惑のかからない選択を行うことが大事です。

廃業のメリット

事業を廃業するメリットとしては、まずは事業主自身が経営のプレッシャーから解放される点が挙げられます。

将来の見通しが暗く、今後さらに厳しい状況が続くならば、早めに廃業を選択した方が、経営者はもちろん従業員にとってもよいケースは少なくありません。

また、廃業によって借入金や債務を清算し、従業員に退職金を支払うなどの義務を果たした後、手元にお金が残れば経営者の資産にできます。

債務超過の事業でなければ、最終的にお金が残る可能性が高いでしょう。経営者自身の退職金のような扱いにすることも可能です。

廃業のデメリット

廃業のデメリットとしては、事業としてこれまで培ってきた実績や業務ノウハウなどが、なくなってしまう点が挙げられます。

資産を別の事業で活用できる場合もありますが、新たな事業に合うようにカスタマイズする必要があるので、一時的にせよ生産性が失われてしまう可能性があります。

また、従業員が職を失ってしまう点も大きなデメリットです。新たな職を見つけるまでの間、無収入になってしまう人が多いため、経営者の選択に不満を持つ従業員も出てくるでしょう。

さらに、取引先も新たな仕事を作らなければならず、迷惑をかけてしまう可能性があります。

選択可能な廃業方法

一言で『廃業』といっても、さまざまな選択肢があります。代表的な廃業の方法を押さえておきましょう。

通常清算

通常清算は、資金的には事業を継続する上で問題がなく、自主的に廃業する際に取られる方法です。

株主総会を通じて解散を決議し、企業の債権・債務関係を整理した上で、残余財産を株主に分配します。自主的な廃業をする企業のほとんどが、通常清算を経て事業をたたむことになります。

ただし、事業の負債が資産を上回っている状況で、債務を完済できない場合は通常清算の手続きは進められません。裁判所の許可の下、以下の特別清算の手続きに切り替える必要があります。

特別清算

特別清算は、債務超過によって通常清算ができない企業の代表的な選択肢です。

特別清算を選択せざるを得ない企業は、債務を完済できる状態ではありません。したがって、債権者との協議や裁判所の許可を経て、債務の一部を免除してもらう必要があります

特別清算には、債権者集会を通じて免除する分の債権を決める方法と、債権者集会が開催できない場合に、個別に債権者と交渉して免除額を決める方法があります。

破産

破産も特別清算と同様、債務超過に陥っている企業が取り得る手段です。

どちらも倒産手続きの一種ですが、破産の場合は企業が裁判所に申し立てを行い、その後の手続きを担う破産管財人が選任される流れになります。

破産管財人は、破産手続きで当該企業の財産を管理・処分できる権利を有する者で、破産法の知識と相応の実務経験が必要です。そのため一般的には、手続きが申し立てられた裁判所が管轄する地域の弁護士が、破産管財人として選任されます。

破産手続きにおける債権・債務の整理に関しては、全て裁判所が選任した破産管財人の判断に基づいて実行されます。特別清算のように、財産の分配に関して経営者の関われる部分はほとんどなく、株主や債権者の同意も不要です。

事業主の債務整理

会社が特別清算や破産をした場合、債権者は債権全額を回収できなくなる場合がほとんどです。ただし、経営者が事業融資の際に個人保証をしている場合は、破産手続き後も返済の義務が発生するので、残りの債権も回収できる可能性があります。

しかし、経営者個人の資産でも債務を完済できない場合も多く、個人の債務整理が必要になるケースもあります。

債務整理は債権の一部免除交渉のことで、経営者の生活を守るための『経営者保証に関するガイドライン』のもと、最低限の資産を残すように整理手続きが行われます。

※参考: 経営者保証のガイドライン|中小企業庁

その他の方法

その他の廃業の方法として、私的整理や民事再生などがあります。私的整理は裁判所を通さず債権者と個別に和解交渉を進める方法です。

事業主自らが債権者に対して債務の免除や支払猶予を求めることになるので、交渉が難航する場合もあり、どうしても負担が大きくなってしまうため、一般的には弁護士を立てて交渉を進めます。

一方、民事再生は廃業の手続きではないものの、裁判所に再生手続きを申し出て、債権者の許可のもとで事業の再建を目指す方法です。大企業から個人レベルの事業まで利用されている手法で、見事にV字回復を遂げた企業も少なくありません。

なお、民事再生に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしましょう。

 民事再生法とは何か簡単に解説。進め方や事例、破産との違いも
用語説明
民事再生法とは何か簡単に解説。進め方や事例、破産との違いも

負債が膨大になり、資金繰りに困った企業には『民事再生』という選択肢があります。債務者は事業の再建を目指し、『再生計画書』に基づいた弁済を行わなければなりません。民事再生の流れや裁判所に申し立てる際の注意点について解説します。

廃業手続きの進め方

廃業手続きの具体的な進め方を確認しましょう。ここでは代表的な廃業手続きである通常清算と特別清算の流れを紹介します。

通常清算(自主廃業)の流れ

企業の通常清算は、以下の流れで手続きが進められます。

1.解散手続きの準備:従業員や取引先への告知や業務整理、買掛金の支払いなど

2.株主総会での解散決議:会社の廃業には株主総会での特別決議が必要

3.清算人の選任と登記:債権・債務の整理を担う清算人の選任と、解散および清算人の登記

4.税金・社会保険関係の手続き:廃業届の提出や適用事業所全喪届など、社会保険関係の書類の提出

5.債権の回収と残余業務の完了:債務者に対する債権の取り立てと、残務の処理

6.解散の公告:債権者に官報で解散の旨を告知

7.財産目録と貸借対照表の作成:解散時点での決算書を作成し、株主総会で承認を受ける

8.解散時の確定申告:解散の翌日から2カ月以内に、事業年度開始日から解散時までの確定申告を行う

9.資産の現金化と債務弁済:清算企業の資産を現金化し債務の弁済を完了。余った現金は残余財産として株主に分配

10.残余財産の確定申告:企業の残余財産が確定した時点で、その日までの確定申告を行う

11.決算報告書の作成:決算報告書を作成し、株主総会で承認を受ける。この時点で法人格が消滅

12.清算結了登記:決算が承認された旨を2週間以内に登記

株主総会の解散決議から清算結了登記まで、2~3カ月の期間を要するのが一般的です。

特別清算の流れ

特別清算には前述のように、債権者集会を開いて協議する方法(協定型)と、個別に債権者と条件交渉をする方法(和解型)がありますが、協定型の清算手続きが取られる場合が多いでしょう。

協定型の特別清算は、まず裁判所に申し立てをした上で、それが受理されると通常清算と同様に企業の財務状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成します。

これらを開催された債権者集会で発表・説明し、合意を得た協定案をもとに資産が現金化され、債務が弁済される流れです。

協定案は清算人が個別に債権者と交渉を進め、まとまったら裁判所からの了承を得る必要があります。

その後、再び債権者集会が開かれ、無事採決されて裁判所からの認可が下りれば、清算手続きは終了です。審査が終了した旨は裁判所によって官報に公告され、清算完了の登記も行われます。

廃業前に検討すべきこと

ここまで、廃業のメリットやデメリット、具体的な手続きを解説してきました。廃業すると、当然ながら同じ企業では二度と業務を続けられなくなるので、解散手続きに入る前に以下の選択肢も検討してみましょう。

事業を休眠させる

廃業するのではなく、休眠会社として事業を一時的に休止し、再開のめどが立ったら再び事業を始める方法もあります。法人としての立場はそのままで事業を休止できるのに加えて、法人税や消費税の納付などが一部免除されるのもメリットです。

さらに、廃業に比べて手続きも簡単なので、将来的に事業を再開するつもりだったり、廃業するかどうか悩んでいたりする段階ならば、事業を休眠させることも考えてみましょう。

M&Aを検討する

廃業を決断する前に、親族や従業員、あるいは第三者に事業を承継することも検討すべきです。特に近年は、後継者がおらず廃業を決断する事業主が増えていますが、M&Aによって第三者に事業を引き継いでもらう方法が注目されています

M&Aに対して大企業のイメージを持っている人も多いですが、中小企業や個人事業でも事業の譲渡は可能です。広く承継先を探せるので、後継者のいない事業の引き継ぎ先として積極的に検討する経営者も増えています。

M&Aの具体的な手続きに関しては、以下の記事で解説しているので、参考にしましょう。

 会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ
手法
会社を売りたい経営者が知っておきたい知識。M&Aの方法と流れ

近年はM&Aによる会社売却が増えています。売却に当たり、売り手は磨き上げを実施し、企業価値を少しでも高める努力をしましょう。株式譲渡による会社売却の流れや注意点、売れない会社と売れる会社の特徴を解説します。

廃業の前にM&Aを検討するメリット

M&Aを検討するメリットとしては、経営者が身を引いても事業を継続できる点や、従業員の雇用を維持できる点、そして事業譲渡によって利益を得られる点などが挙げられます。

雇用状態や職場環境を維持することを条件に譲渡先を募れば、従業員にも迷惑をかけずに引き継ぎができるでしょう。

近年は仲介業者やマッチングサービスも増えているので、廃業により事業を終わらせてしまう前に、M&Aによる事業承継を検討することをおすすめします。

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まとめ

廃業の定義やメリット・デメリット、具体的な方法や手続きを解説しました。廃業は事業をやめて会社を消滅させる手続きで、近年は後継者不足によって廃業を選択する経営者が増えています。

経営のプレッシャーから解放されるといったメリットもありますが、廃業によって従業員が職を失い、経済的に不安定な状況に置かれる可能性もあります。

廃業を決める前に、休業やM&Aによる事業承継なども検討してみましょう。従業員や取引先、債権者など、事業の利害関係者にとってもベストな選択をする必要があります。