2024-06-25

レンタルスペース購入者が語る「市場の現況」!重要なのは独自戦略とこまめなテコ入れ

買い手(個人):Kさん(40代)

<個人の起業を目的としたM&A・買収事例>

 

民泊運営やレンタルスペース事業を行うため、起業を果たした会社員のkさん。

0→1より1→100が得意というKさんは、新規で事業を立ち上げるよりも既存の事業を購入して引き継ぐM&Aへの挑戦が自分に合っていると感じて、名古屋のレンタルスペースを購入します。

広さや特徴が異なる2つのレンタルスペースをまとめて購入したKさん。購入後は、2つのレンタルスペースの予約数や売上がこれまでの実績と逆転するなど、予想外の事態も起こったといいます。

レンタルスペース事業の経営者として、市場の変化やニーズを冷静に見極めながらテコ入れを続けているKさんに、レンタルスペース市場の最近の傾向や今後の戦略、そしてM&Aを行う上で必要な心構えについて伺いました。

 

【0→1より1→100が得意だからこそ、M&Aに着目】

- まずは、Kさんのキャリアについて教えてください。
大学時代から起業に興味があり、経営学を学んだり、インターンシップに積極的に参加したりしていました。新卒では消費者金融会社に入社して、1年4か月で支店長に就任。25歳の頃には年収1200万円になっていました。

ただ、都市銀行に吸収合併される流れになったこともあって、転職を考えることに。そして選んだのが、鍵の紛失やトイレのつまりといったお困りごとを解決する、緊急駆け付けサービスの会社です。

不動産会社を間に挟んで入居者の方にサービスを提供する、BtoBtoCのビジネスモデルに興味を持ったことも入社理由でした。

- 会社員でありながらM&Aで東京都の民泊事業を購入されていますが、そもそもM&Aに注目したのはどのようなきっかけからでしたか。
緊急駆け付けサービスの会社ということで、全国の不動産店舗と取引があるため、頻繁に出張の機会がありました。そのなかで、ドミトリーや民泊施設が急激に増えていることに気付き、興味を持つようになったんです。

調べていく中で、そうした宿泊施設の多くが「急なトラブルにどう対応するか」という課題を抱えていると知りました。

スタッフを常駐せざるをえなかったり、深夜に急な呼び出しを受けて自分たちで駆け付けたりしている宿泊施設も多くあったからです。もちろん、トラブル対応が遅くなると、宿泊者の不満に繋がってしまうケースもあります。

こうした実情や課題を知って、私の所属先が提供している緊急駆け付けサービスと組み合わせ、トラブル対応にも長けた民泊施設を構えることができれば、他の民泊施設とも差別化できそうだと感じて、ビジネスの可能性を感じました。

私はもともと、0から1を創るよりも1を100にすることの方が得意。だからこそ、M&Aという手法に目を付けて、M&Aプラットフォームで個人でも購入できる案件を探し、まず買収いたしました

- 民泊事業とあわせて、今回名古屋のレンタルスペース事業も購入されていますが、こちらはどうしてですか。
民泊事業とレンタルスペース事業は、「物件のオーナーは別に存在しており、私が賃借人として物件を借り、転貸借する」という点が共通しています。手元資金が少なくても挑戦できるところが最大の魅力だと感じています。

収益性の部分では、民泊の方が圧倒的に投資回収のスピードが早いと思います。そのため、当初は民泊事業にフォーカスして起業しようとしていました。

しかし、競合も多い中、民泊1本でビジネスを運営していくのはリスクが大きいなと。そこでリスク分散のためにも、レンタルスペース事業もあわせて運営しようと決めました。

- 購入したレンタルスペースの特徴と、魅力に感じた点を教えてください。
購入したレンタルスペースAは、2021年10月に名古屋駅の近隣にオープンしたスペースです。

私は、「すでに集客に成功していて、一定の収益を継続的に見込めること」と「競合と比較したときに光る特徴を持っていること」を条件に、スペースを探していました。

レンタルスペースは競争過多状態であり、立地や単価以外での差別化が難しいからこそ、他のスペースが真似しづらい何かしらの特徴を持っていることは重要だと思ったからです。

このレンタルスペースAは、オープン以来黒字経営を続けていることに加えて、デザイナーこだわりの、ピンクとホワイトを基調としたガーリースペースの内装が特徴的です。

なかなか類を見ない内装であり、レンタルスペースの予約サイトにおけるレビュー数も多かったため、ぜひ購入したいと思い、交渉を申し込みました。

【購入後、予想外の推移を見せた売上。予約数が伸びたスペースの要因は「広さ」】

- どのようなことを意識して交渉に臨みましたか。
まず交渉を申し込む際には、「なぜ自分がレンタルスペースを運営したいのか」という理由やビジョンが伝わるようなメッセージを送るように心掛けました。

また、内見をしたいという意向も伝えました。写真だけでスペースの全体像は掴めないため、現地に足を運んでみると「想像より狭かった」や「使いづらかった」といったことも起こるもの。

「駅から徒歩〇分」といった情報の信憑性も確かめなければならないからです。

本来ならまずは内見をしたかったところですが、「内見の前に、基本合意契約をいったん結んでほしい」と売り手様から要求されたため、その順番で内見を行うことに

改善した方がいいと思うことや、「これがあったらいいのに」と思うものをリストアップしつつ、「どこにテコ入れをしたら、スペースがより良くなるか」を考えながら内見を行いました。

交渉においては、「『諸経費』を分解すると、何にいくら掛かっていますか?」などと収支状況を詳しくヒアリングするようにもしました。また、売り手様のスケジュールを尋ねて、1日や1週間の労働時間がどれくらいになるかも確認しましたね。

- 価格交渉はどのように進みましたか。
今回レンタルスペースを2件あわせて購入することになったのですが、もう一つのレンタルスペースBは、モダンシックな内装で広めのスペース。

大きな特徴はないため、正直なところレンタルスペースAほどの魅力は感じませんでした。ただ収支表を見せていただく限り、昨対比の売上は悪くなかったため、まとめて購入してもいいかなと思ったのです。

売り手様が「新しいスペースに投資するため、手元のキャッシュをできるだけ早く増やしたい」というニーズをお持ちだったため、「2つまとめて購入する代わりに、大幅に値引きをしていただきたい」とリクエストをしました。

受け入れていただき、無事に交渉が成立しました。

契約の際には、予約サイトの運用方法や備品や消耗品の買い方、スペースの清掃方法などについて、2か月間無償でフォローしていただく特約も付けていただきました。

実際にZoomで手厚くフォローしていただいたので助かりましたし、今でも売り手様との関係性は良好です。

- 購入後、レンタルスペースの改善は行いましたか。
内見の時点で改善したいところには目星を付けつつも、レンタルスペースの運営は初めてだったため、最初は何も変えずに売上の推移を確認しました。しかし、結果的に前年比を下回ってしまい、テコ入れをすることにしたのです。

実は、ガーリースペース風の内装が特徴的なレンタルスペースAを内見した際、期待値を3割くらい下回る印象を受けていました。主な要因は壁紙です

売り手様は「安い壁紙を使っているので、張り替えがしやすい」ことをメリットとして挙げていました。しかし、その壁紙が利用者の方をがっかりさせてしまう可能性があり、リピートに繋がらないのではデメリットでしかないなと。

そこで、もともとの壁紙より1.2倍ほど高価な壁紙に張り替えました。この取り組みが良かったようで、売上は徐々に上がり始めています。

- どちらのレンタルスペースも、購入後は売上が下がったのですか。
2024年1月にレンタルスペースを購入しましたが、購入当初は収支表通り、レンタルスペースAの集客が順調で、モダンシックな内装のレンタルスペースBは前年比20%減という状況でした。

ただ、3月から4月ごろに状況が一変して、レンタルスペースBの予約数がぐんと伸び、稼ぎ頭だったレンタルスペースAが赤字に転落したのです。

というのも、運営していて気付いたのですが、今は大きいスペースの方が圧倒的に需要が大きくなっているようです。

撮影をするにも、お誕生日や記念日のお祝いをするにも、広い方が使いやすいからなのでしょう。レンタルスペースBは広い一方で、レンタルスペースAは2~3人用の狭いスペースであるため、予約数に2.5倍ほどの差が開くようになってしまいました。

前年の実績は大切ではあるものの何が訴求価値になり、どのような理由でお客様に選んでもらえるかは、ニーズの変化にも伴うので引き続き注視していく必要があると感じています。

- レンタルスペースBにも、改善を施したのでしょうか。
レンタルスペースBのウリは広さや高級感だと思ったため、そうした特徴が視覚的にわかる写真をセレクトして、予約サイトのページをリニューアルしました。

他には、備品も変更しました。一般的に、レンタルスペースの備品は安価なもので済まされがちですが、食器や照明器具を高級感のあるものに買い替えたのです。

ありきたりな空間で、備品も満足に揃っていなければ、自宅や友人の家で事足りるもの。わざわざレンタルスペースを予約してくれるお客様は、「非日常を味わいたい」という気持ちを少なからず持っているはずです。

だからこそ、そのニーズにふさわしい空間を用意しなければいけないなと。

また、レンタルスペースBは、大人数でのライブ鑑賞会などにも利用されているようだったので、説明書を読み込まなくても簡単にお客様のスマートフォンやPCの映像を投影できるミラーリングのしやすさにこだわった設備を整えたり、充電器を常設したりしました。

とにかく、「これがあったらいいな」「家から持ってこなくてよければ楽だな」と思うものをどんどん揃えていって、空間のクオリティを上げていったのです。



(運営しているレンタルスペース)

【カラオケやレストランもライバル!?戦略が問われるレンタルスペース運営】

- レンタルスペース市場は、現在どのような状況だと感じますか。
かなり厳しくなっていると感じます。レンタルスペースAも、他がなかなか真似できない特徴的な内装をしているにも関わらず、伸び悩んでいますから。

私が名古屋のレンタルスペースを購入した理由のひとつが、東京と比較したときに、大幅にレンタルスペースの数が少なかったから。

ただ、少額投資で始められるレンタルスペース事業に注目する人が増え、レンタルスペースの数自体も増えたのだと思います。

一方で、私は同業者が増えて競争が過熱しているというよりも、別の業界からレンタルスペースに参入した企業にお客様が奪われているという印象を持っています。

たとえば、カラオケもレンタルスペースを始めていますし、大手の写真館も写真撮影のためのスペースや備品を貸し出すという、撮影用途に特化したスペースの提供を始めています。

また、真似できないと感じるのは、料理の提供も含めて空間を提供しているレストランです。メルヘンチックな内装かつ広めの個室で、料理を楽しみながら非日常な空間を味わえるプランなども増えているからです。

このように、他の業種がもともとの事業に+αで、レンタルスペースユーザーのニーズを満たすようなサービスを提供し始めているからこそ、彼らに負けない付加価値を提供できなければ、レンタルスペースの売上を上げていくことがどんどん難しくなっていくのだろうと感じます。

- そうした状況下で、レンタルスペースが生き残っていくためには、どのような戦略が必要なのでしょうか。
一つアイデアとして浮かぶのは、コンセプトを柔軟に変えていくことかなと。

たとえばコンセプトカフェなどは、期間限定かつ旬な作品とコラボレーションをするからこそ流行っていますよね。

レンタルスペースにおいても、定期的にコンセプトを変更したり、季節ごとのデコレーションを取り入れたりすることで、「このスペースは常に新しいものを提供してくれるから、マークしておこう」と思われる存在になれるのではと思っています。

ただ、私が運営しているレンタルスペースAの場合は、「この内装だからこそ」選んでくれるお客様もいらっしゃるため、安易に変えづらいものです。

内装となるとテストマーケティングがしづらいですし、変更して集客がゼロになってもいけないので。そこは悩みどころですね。

- コンセプトを柔軟に変更していくとなると、レンタルスペース運営に手間が掛かりそうですよね。
そうなんです。本来は民泊事業もレンタルスペース事業も手離れがいいため、サラリーマンを続けながら運営できる点が魅力でした。だからこそ、レンタルスペースのテコ入れに力を入れることは、本来なら合理的ではないのかなと。

ただ、おそらく多くのレンタルスペース運営主が同じ考えで手を掛けていないからこそ、手を掛けたら掛けた分、他のレンタルスペースとの差別化を図ることができて、リターンを見込めるのかなとも感じています。

いくら手が掛からなくても、予約が入らなければ本末転倒。それなら、私は細かくテコ入れをしていく方向性に舵を切ろうと思っています。

【収支表は「未来の保証」にあらず。他責にせず、覚悟を持って変化していくべし】

- 今後のビジョンを教えてください。
特徴の違うレンタルスペースを2つ購入したからこそ、比較しながら打ち手を考えることもできるので、少しずつ改善を重ねながら予約数や売上の推移を引き続き見ていきたいと思います。

テコ入れの効果が出て売上を上げることができたら、そこで見つけた成功パターンをもとに、レンタルスペースをさらに展開していくことも視野に入れています。

- M&Aに興味を持っている方に向けて、アドバイスをお願いします。
どんな案件を買うにしろ、前年の実績を鵜呑みにすることは危険です。まずは現地や現物を自分の目で見てみたり、ユーザーとしてサービスを利用してみたりすることが重要かなと思います。

自分で体験してみないと、「お客様がこのモノやサービスに、本当にお金を遣ってくれるのか」を見極めづらいので。

また、業界展望などは語られていても、どのような外部要因の影響を受けるかを完全に想定することなどできません。

たとえ購入後、最初の数か月はこれまでと同程度の業績で推移したとしても、未来の保証はありません。だからこそ、将来の責任は自分が追うという覚悟を持って、購入することが重要かなと思います。

そして、「覚悟を持って変化していくこと」も必要かなと。たとえ今期の業績が落ち込んだとしても、そこから学んで軌道修正ができれば来期の売上を上げることはできますし、永続的に事業を続けることもできるはずですから。

他責にせず覚悟を持って、実態をよく見た上で変化をしていくことが、事業を運営する上では大切だと思います。

 

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