2024-08-06

デジタルマーケティング会社がコーヒースタンドに目を付けた理由

買い手(法人):株式会社Ansatz

<中小企業の新規事業を目的としたM&A・買収事例>

 

東京都中央区日本橋にあるde.coffee roastersは、"ディカフェ専門"のコーヒースタンドとして、コーヒーにアレルギーのある方や、カフェインが苦手な方、妊婦さんなどを含めた幅広いお客様に愛されているお店です。

このお店が売り手様の事情により売却されることになり、多くの申し込みの中から譲渡先に選ばれたのは、企業のデジタルマーケティング支援を手掛けている株式会社Ansatzでした。

Ansatzの代表を務める古賀さんにコーヒースタンドを買収した理由、M&Aのプロセスや引き継ぎ後の運営状況について、お話を伺いました。

【デジタルマーケティングとは対極のローカルビジネスをあえて選択】

まずは

- まずは、古賀さんのキャリアについて教えてください。
デジタルマーケティングをサポートするベンダーからキャリアをスタートした後、転職して、営業・インサイドセールス・カスタマーサクセスに事業開発といったビジネスサイド全般を経験しました。

30歳を超えたタイミングとコロナ禍が重なり、今後のキャリアを考えたときに、一度自分で事業に挑戦してみるのもいいかなと思ったんです。

もし失敗したとしても、まだやり直しが可能な年齢だなと。そして、2021年に株式会社Ansatzを創業して、マーケティング支援を中心とした事業を行っています。

これまでの仕事での繋がりや知り合いからの紹介もあってプロジェクトにも恵まれ、毎年150%ほどの事業成長を続けています。

現在、社員は私ともう1名ですが、組織をもう少し拡大していくための基盤も整ってきて、M&Aに挑戦してもよいかなと思うようになりました。

- どういう条件で選んでいましたか。
特に業態を絞って探していたわけでもありませんが、事業に改善できる余地があって、かつ固定費がなるべく掛からない案件を中心に見ていました。

購入した案件は、コーヒースタンドなので家賃は掛かるものの、安く抑えられることもあって、前向きに検討することができました。

- 改めて、今回購入された案件の概要を教えてください。
2021年7月に開店した、東京都中央区日本橋にあるディカフェ専門のコーヒースタンドです。テイクアウトが基本ですが、軒先にあるベンチで飲食も可能です。

カフェインが抜かれた生豆を仕入れ、自家焙煎により理想の味わいを実現していることがウリです。カフェインが苦手な方や妊婦さん、お子さんにも安心して飲んでいただけます。

- こちらの案件の、どのようなところに魅力を感じましたか。
一番の魅力に感じたのは、ローカルビジネスに挑戦できるということです。マーケティングを支援しているお客様の中には、そうしたビジネスを展開されている企業様もいるので、ローカルビジネスの経験は本業にも生きるだろうなと思います。

また、自分がこれから事業を展開する上でのヒントを貰えるのではと思ったんです。というのも、会社を創業して事業を運営する中で、事業や組織の急成長を目指すようなスタートアップ的な戦い方は、自分たちには合っていないと感じていました。

自分の周りにいる、何らかの悩みを抱えた人や企業の課題解決を手伝いながら、できるだけ長く事業を続けることが自分たちらしいのではと思っていたのですが、これは地域に根付いて愛され、長く続くお店を作るローカルビジネスと似ている感覚なのではないかなと感じました。



(Ansatz代表の古賀さん)

【善は急げ。スタッフを採用する前にM&Aを決心】

- 申し込みや交渉にあたって心掛けたことはありますか。
売り手様が大事に育てられてきたお店なので、「思いを引き継ぎつつ、これまで売り手様が築かれてきたものをベースに運営をしていきたい」ということは、交渉の中で伝えました。

また、交渉段階では家族と一緒にお客さんとしてお店に足を運びました。小さいコーヒースタンドですが、スタッフとの距離感が近く、自分が想像していた通りのお店でしたし、味も美味しかったです。

- 今回が初めてのM&Aだったようですが、交渉過程でのトラブルなどはありませんでしたか。
交渉はかなりスムーズに進んだと思います。ただ、顧問弁護士と相談しながら契約書の作成などを進める中で、私から相談するタイミングが遅れてしまったために急ピッチで契約を進めることになってしまったことは反省点です。

また、案件の金額感がそれほど大きくなかったこともあって、特にデューデリジェンスなども行わずに購入を決断したのですが、本来なら資産の内容などをしっかり確認して、金額が妥当かを判断するようなプロセスを踏んだり、リスク管理を行ったりといった過程をしっかりとすべきなのだろうと思います。

- 苦労したことはありましたか。
アルバイトスタッフの採用です。

これまでは売り手様が自らお店に立っていたのですが、私は店に立てないため、お店を任せられるスタッフを新たに採用する必要がありました。

実は今回、素早く決断して動くことを大事にしたのもあって、「きっと何とかなるだろう」という思いで、採用をする前に購入を決断したんです。そのため、12月に購入してから再オープンする5月までは、お店はずっと準備状態が続きました。

というのも、私は飲食業界の経験者ではないため、「どのようなスキルセットの人を採用すれば、お店を任せられるのか」がわからず、採用活動に移るアクションが遅れてしまったのです。

ただ、「今度コーヒースタンドを始める予定で」と仕事仲間に話していたところ、カフェでアルバイトをしている女性を紹介していただくことができました。

話を聞くと「ゆくゆくは自分の店を持ちたい」ということだったので採用して、「自分の好きなように店を運営していいから」と託し、今は1人でコーヒースタンドを運営してくれています。



(提供されているメニュー①)

【Webサイトを一新、メニューも強化。滑り出しは順調】

- M&Aを行い、お店をリニューアルオープンする上で、何か変えたことはありますか。
Webサイトをリニューアルして、誰が見ても「どんなお店なのか」がしっかりと伝わるような内容に変えたり、本格的な撮影を行ってより魅力的な写真を掲載したりするようにしました。

メニューについては、基本的には売り手様のレシピを引き継いでいますが、アフォガードやマンゴーパンナコッタジュースなど、夏に向けた新メニューを新しく開発しています。

- 5月のリニューアルオープン以降の、お店の状況はいかがですか。
お店を閉めていた期間があったものの、交渉時に売り手様から伺っていたものとほぼ同等の売上が出ているので、順調だと思います。

「またオープンしたんだね」「スタッフさんが変わったのね」と認識して、変わらず通い続けてくれているお客様もいます。

最近はプレスリリースも出していますし、それをきっかけに取材をして記事にしていただくこともあるので、そういったものから目に留めて来店してくれるお客様もいますね。

ただ、売上は まだまだ事業と呼べるほどのサイズ感ではありません。一つひとつのオペレーションをしっかりと強化して、お店が安定して運営できる基盤を作ることができたら、新しいことにも取り組みたいと考えています。

- M&Aを行ってよかったと感じることはありますか。
週1回ほどお店に足を運んでいるのですが、スタッフとお客様がおしゃべりをしている光景を見るとうれしくなります。

これまでマーケティング支援を行う中で、お客様のプロダクトやサービスが売れる瞬間には立ち会ってきましたが、自分たちが運営しているお店でお客様との関係性を育むことができたり、リピーターの方が増えたりするうれしさはやっぱり格別だなと。また、リテールビジネスのオペレーションについても、手触り感を持って理解できてきています。



(提供されているメニュー②)

【豆の定期便をはじめたい】

- お店の今後の展望を教えてください。
この1年は、店舗のオペレーションをしっかり確立しつつ、売上の傾向値を掴んだり、試行錯誤をしながら、どのような施策がお客様の来店に繋がるのかを確認したりすることがメインになりそうです。

今後、新しく始めようと考えているのは、豆の定期便です。店舗で販売している豆を、オンラインでも販売できたらいいなと。

ただ、規約の策定や配送体制など考えなければならないことも多く、まだ十分に時間を割いて考えられていないので、これから取り組んでいきたいです。

- 今後M&Aに挑戦したいと考えている方に向けて、アドバイスをいただけますか。
自分の価値観と売り手様の価値観が遠すぎるM&Aは、しない方がいいのかなと思います。お互いの価値観や考えや思想を共有できて、かつそれらが似ている関係性で行うM&Aの方が成功確率が高まるからです。

特に、今回私が行ったような金額感の大きくないM&Aにおいては、事業を立ち上げられた背景や事業に込めた思い、これからも変えずに守ってほしいと思っていることなどを売り手様から伺った上で、自分の考えや自分が大事にしたいこととの擦り合わせを行うプロセスが大事なのかなと思います。



(お店の外観)


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■Ansatzが今回買収した案件はこちら

「【ディカフェ専門】コーヒースタンド」

■Ansatzが現在運営しているディカフェ専門のコーヒースタンドはこちら

「de.coffee roasters」

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